日本人のがんの中で死亡数が最も多い肺がん。その理由のひとつは、症状などからの早期発見が難しいことにあります。肺がんは女性より男性に多く、喫煙が発症リスクを高めることが分かっていますが、近年では非喫煙者や女性の患者さんも増えてきています。今回は、肺がんで現れる症状や早期発見のための検査などについて解説します。
肺がんとは、どんな病気?
肺は胸部の左右に1つずつある臓器で、右の肺は上葉、中葉、下葉の3つに、左の肺は上葉と下葉の2つに分かれています。肺の重要な役割は、体の中に酸素を取り入れ、不要な二酸化炭素を外に排出することです。肺の中には空気の通り道となる気管支が通っており、枝分かれを繰り返した気管支の先端付近には、ぶどうの房状の肺胞(はいほう)という小さな袋が無数についています。
肺がんは、気管支や肺胞の細胞ががん化したものです。がん細胞の形や大きさなどによって、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの大きく2つに分けられます。発生頻度は非小細胞肺がんのほうが多く、中でも腺がんが肺がん全体の半数以上を占めています。
同じ肺がんであっても、非小細胞肺がんと小細胞肺がんでは治療方針が異なるため、最初に検査によって肺がんのタイプを確認することが重要になります。組織の型以外にも、肺に発生したもの(原発性肺がん)か、ほかの臓器にできたがんが肺に転移して発生したもの(転移性肺がん)か、でも分類することができます。
肺がんにかかりやすい人の特徴とは
肺がんは患者数の多いがんであり、がんと新たに診断される患者さんの数は大腸がんに次いで第2位となっています。また、ほかのがんと比べると死亡数が多く、死亡数の順位はすべてのがんの中で第1位です。
肺がんは男性では10人に1人、女性では20人に1人の確率でかかると推定されており、男性に多いがんです。50歳を過ぎると男女ともに肺がんにかかる割合が高くなり、加齢とともにその割合は上昇します。(※2)
肺がんの発症リスクを高める主な要因の1つが、喫煙です。非喫煙者と比べた場合、喫煙者は男性で4.4倍、女性で2.8倍肺がんにかかりやすくなります。喫煙開始年齢が若く、喫煙量が多いほど肺がんのリスクは高まります。また、喫煙していなくても、喫煙者の周囲でタバコの煙を吸ってしまう受動喫煙によって、肺がんのリスクは2~3割程度高まるといわれています。
肺がんに特有の初期症状はある?
肺がんの主な症状として、咳(せき)や痰(たん)、血痰(血が混じっている痰)、息苦しさ、胸の痛みなどが挙げられますが、これらは風邪や肺炎、気管支炎などの肺がん以外の呼吸器の病気でも現れる症状です。
肺がんの初期症状として特有の症状はなく、進行した場合でもほとんど症状が現れないこともあるため、症状から肺がんを早期発見するのは難しいといわれています。
肺がんの主な症状
- 咳、痰
- 痰に血が混じる
- 息苦しさ
- 胸の痛み
- 動悸
- 発熱
肺がんを早期発見するための検診・検査
肺がんは特有の初期症状がないことから、早期発見のためには定期的にがん検診を受けることがとても大切です。国の指針にもとづいて実施される肺がん検診は40歳以上の人を対象としており、自覚症状や喫煙歴、妊娠の可能性の有無などを確認する問診を行った上、胸部レントゲン(X線)検査を実施します。
50歳以上で、喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上の人は特に肺がんのリスクが高いとされ、胸部X線検査に加えて喀痰(かくたん)細胞診も行います。肺がんの場合、がん細胞が痰の中にはがれ落ちることがあるため、痰を採取して顕微鏡でがん細胞の有無を調べます。
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